鏡の中の顔 - 反映されない真実(短編)

静かな海辺の町に、昔から伝わる古い屋敷がありました。

この屋敷には、不思議な力を持つと言われる古い鏡がありました。

言い伝えによると、この鏡は見る者の本当の姿を映し出すとされていました。

 

大学の研究グループのアサミは、この屋敷と鏡に関する伝説に興味を持ち、調査のために町を訪れました。

彼女は屋敷の現在の持ち主から許可を得て、鏡を調査することにしました。

 

屋敷に入ると、アサミは古びたが豪華な装飾のある大きな鏡に目を奪われました。

鏡を見ると、そこには彼女自身の姿が映っていましたが、何かがおかしかったのです。

鏡に映る彼女の表情は、実際の彼女の表情とは異なっていました。

 

アサミはこの不可解な現象に興味を持ち、鏡の歴史を調べ始めました。

調査を進める中で、彼女はこの鏡がかつて屋敷の主人によって海外から持ち込まれ、その後、不幸な出来事が続いたことを知りました。

 

鏡には、見る者の心の内を映し出し、時にはその恐れや悲しみを強く反映する力があると言われていました。

そして、過去にこの鏡を見た人々は、その後、不可解な事故や事件に見舞われていたのです。

 

アサミはこの鏡がただの物ではなく、何らかの超自然的な力を持っていると確信しました。

彼女は鏡に更に深く迫るため、夜に再び屋敷を訪れることにしました。

 

夜、屋敷は静まり返っていました。

アサミは鏡の前に立ち、自分の姿をじっと見つめました。

すると、鏡の中の彼女の表情が徐々に変化し、悲しみや苦痛に満ちた顔になっていきました。

 

その時、アサミは背後から声を聞きました。

   「私の顔を返して…」

という囁き声でした。

振り返ると、そこには若い女性の霊が立っていました。女性は、かつてこの屋敷で不幸な命を落とし、その魂が鏡に囚われていたのです。

 

アサミは女性の霊に話しかけ、その悲しい過去を聞きました。

女性は、屋敷の主人に裏切られ、深い絶望の中で亡くなったと語りました。

彼女の魂は鏡に映ることで、この世に未練を残していたのです。

 

アサミは女性の霊を救うために、屋敷の持ち主と地元の神職者に協力を求めました。

彼らは儀式を行い、女性の魂を安らかにするための祈りを捧げました。

 

儀式が終わると、女性の霊は静かに微笑みながら消え去りました。

そして、鏡に映るアサミの顔も元の彼女自身のものに戻りました。

 

この出来事を通じて、アサミは過去の悲劇が現在にどのように影響を与えるかを深く感じました。

また、屋敷の持ち主も、鏡の伝説を新たな目で見るようになり、屋敷を地元の人々に開放することにしました。

最後までお読みいただきありがとうございます。

このお話しはフィクションです。