かつて山あいの小さな村に、古びた神社がありました。
その神社は、村の人々にとっては護り神であり、何世代にもわたって大切にされていました。
しかし、ある時から、村の人々は神社を避けるようになりました。
不吉な噂が広がったのです。
伝説によると、神社の裏にある古井戸には、百年以上も前に不幸な女性の霊が封じられていると言われています。
その女性は、恋人に裏切られ、絶望のうちに井戸に身を投げたとされています。
それ以来、その井戸の周りでは不可解な現象が起こると噂されていました。
ある夜、村の若者たちがその井戸の真実を確かめようと決意しました。
彼らはランタンを手に、神社へと足を運びます。
神社の境内は静まり返っており、ただ風の音だけが聞こえていました。
彼らが井戸に近づくにつれ、空気が冷たくなり、重苦しい雰囲気に包まれました。
井戸のそばで、彼らは恐る恐る覗き込みます。
すると、突然、風が強く吹き、ランタンの灯りが消えてしまいました。
真っ暗闇の中、彼らは何かが井戸から這い上がってくる音を聞きました。
恐怖に震えながらも、彼らは手を取り合い、神社から逃げ出しました。
翌朝
村人たちは神社の井戸のそばで若者たちのランタンを見つけました。
しかし、彼らの姿はどこにもありませんでした。それ以来、誰もその神社に近づくことはありませんでした。
村の人々は言います。
井戸から這い上がったのは、裏切られた女性の怨霊だったのだと。
そして、彼女はまだその井戸の中で、次に自分の悲しみを聞いてくれる人を待っていると。
それからというもの、村では夜になると、遠くから女性の声が聞こえることがあります。
まるで、誰かを呼んでいるかのように…。