白い手の窓 - 夜中の訪問者 (短編)

静かな郊外の街に住む大学生、ユミは、ある夜、不思議な体験をしました。

彼女の部屋の窓に、突如として白い手が現れたのです。

その手は窓ガラスを叩き、まるで中に入ろうとしているかのようでした。

 

最初、ユミはこれを悪戯だと思いましたが、その手はあまりにも異様で、人間のものとは思えないほど白く、細長かったのです。

恐怖に震えながら、ユミは窓を確認しましたが、外には誰もいませんでした。

 

翌日、ユミは友人のタカシにこの話をしました。

タカシは興味深々で、夜、ユミの部屋で一緒に様子を見ることにしました。

二人は夜遅くまで話をしていましたが、何も起こりませんでした。

タカシが帰った後、ユミは一人で眠りにつきました。

 

しかし、深夜、ユミは再び窓を叩く音で目を覚ましました。

恐る恐る窓の方を見ると、そこにはまたもや白い手が…。

今度は手が窓枠をはい上がり、部屋の中に入ろうとしているようでした。

 

ユミは怖くて動けず、その場に固まってしまいました。

窓からは冷たい風が吹き込み、部屋の中は一気に冷え込みました。

そして、その白い手はゆっくりと消えていきました。

 

翌朝、ユミはこの出来事を近所の人に話しましたが、誰も信じてくれませんでした。

ただ一人、町の古い住人であるおばあさんだけが、真剣な顔でユミの話を聞きました。

 

おばあさんは、数十年前にこの町で起きた事件について語り始めました。

その事件は、ある家族が一夜にして行方不明になり、その家からは白い手の跡が多数見つかったというものでした。

 

ユミはこの話に興味を持ち、その家族のことをもっと調べることにしました。

彼女は図書館で新聞の古い記事を調べ、行方不明になった家族についての情報を集めました。

 

記事によると、その家族は非常に幸せそうに見えましたが、夜な夜な家に現れる白い手に悩まされていたと言われていました。

そして、ある夜、彼らは突然消え、その後、誰もその家に住むことはありませんでした。

 

ユミは、この家族が住んでいた家の場所を突き止め、その家を訪れました。

家は荒れ果てており、周囲は不気味な雰囲気に包まれていました。

彼女は家の中に入り、調査を始めました。

 

家の中で、ユミは奇妙な日記を発見しました。

その日記には、白い手についての記述が詳しく書かれていました。

日記の主は、白い手が何かを伝えようとしていると感じていたようです。

 

日記を読んだユミは、白い手が過去の悲劇を伝えようとしているのではないかと考えました。

彼女は日記に書かれていた手掛かりを元に、町の過去の事件を調べ上げました。

 

やがて、ユミは白い手の正体に辿りつきました。

それは、行方不明になった家族の一員であり、彼らの死を伝えようとしていたのです。

家族は、ある事件に巻き込まれ、悲しい最期を迎えていました。

 

ユミはこの事実を町の人々に伝え、家族の供養を行いました。

供養が終わると、不思議なことに白い手の出現はピタリと止まりました。

 

ユミはこの体験を通じて、過去の悲劇が時には忘れ去られることなく、現在に影響を与えることを学びました。

そして、彼女は町の人々と共に、行方不明の家族を悼むようになりました。

 

最後までお読みいただきありがとうございます。

このお話しはフィクションです。