忘れられた病棟 - 消えた患者の謎(短編)

かつて

山の中腹に位置する小さな町に、古い病院がありました。

この病院は長い歴史を持ち、多くの患者が治療を受けていました。

しかし、病院には一つ、長年の謎がありました。それは、病院の最上階にあるはずのない

「第四病棟」

の存在でした。

 

ある日、若い看護師のアイコがこの病院に赴任してきました。

彼女は熱心に仕事をこなし、患者からの信頼も厚かった。

しかし、アイコは同僚から聞いた「第四病棟」の噂に興味を持ち始めました。

 

「第四病棟には、誰も入れない。でも、時々、そこから誰かの声が聞こえるんだ…」

 

アイコはこの話をただの都市伝説だと思っていましたが、ある晩、勤務中に奇妙なことが起こりました。

深夜、彼女は何者かの足音と囁き声を聞き、それが第四病棟から聞こえてくるようでした。

 

好奇心に駆られたアイコは、禁じられていた第四病棟へと足を踏み入れることを決意しました。

彼女は深夜、誰もいない廊下をそっと進み、隠されていたはずの第四病棟への扉を見つけました。

 

扉を開けると、そこには見慣れない古い病室が並んでいました。

しかし、その部屋には誰もおらず、ただ寂しげな空気が漂っていました。

アイコは奥へと進むと、突然、病室の一つから嘆きの声を聞きました。

 

「助けて…ここから出して…」

 

声の主を探し、アイコはその部屋に入りました。

すると、ベッドには消えかけた透明な姿の老婆が横たわっていました。

老婆はアイコに手を差し伸べ、

 

「ここは忘れ去られた場所。私たちは消えゆく運命にある…」

と語りました。

 

アイコは恐怖と共感を感じ、老婆の手を取ろうとしましたが、手は彼女を通り抜けてしまいました。

その瞬間、老婆の姿は消え、部屋には再び静寂が戻りました。

 

彼女は急いで第四病棟を出て、翌日、その夜の出来事を上司に報告しました。

しかし、上司は彼女の話を信じず、

 

「そんな病棟は存在しない」

 

と一蹴しました。

アイコは、自分が夢を見ていたのかと疑い始めました。

 

しかし、数日後、アイコは病院の古い記録を発見しました。

そこには、かつて第四病棟で行われていた実験と、その後、病棟が閉鎖された記録が残されていました。

病院側は何かを隠していたのです。

アイコは真実を追求しようとしましたが、その日以来、彼女の姿を見た者はいません。

病院はその後も平穏な日々を送っていましたが、時折、

最上階から人の声が聞こえるという噂が消えることはありませんでした。