地図に載らない村 - 忘れられた谷間の秘密(短編)
ある日
旅行好きの大学生、ヒロシは、地図にも載っていない「幽谷村」という名の村の噂を耳にしました。
伝説によると、その村は深い山間に隠された谷間に存在し、外部からの訪問者を受け入れることはめったにないということでした。
ヒロシは好奇心から、幽谷村を探索することを決意しました。
彼は友人のケンジとアヤカを誘い、週末に幽谷村を訪れる計画を立てました。
彼らは地図とコンパスを頼りに、山道を歩き始めました。
長い時間をかけて山を登り、谷間を下りた彼らは、遂に小さな村を発見しました。
しかし、その村はなぜか寂れており、人の気配はほとんどありませんでした。
「こんにちは!」
とヒロシは声をかけましたが、誰も応答しません。
彼らは村を探索し始めました。古びた家々は長い間、人の手によって修繕されていないように見えました。
突然、アヤカが
「誰かいる!」
と叫びました。
彼らは一軒の家から出てきた老婆を見つけ、話を聞こうと近づきました。
老婆は彼らを不信そうに見つめ、
「ここは忘れられた村。お前たちはここに来るべきではなかった」
と言いました。
ヒロシたちは村の謎を探ろうと、老婆に質問しましたが、彼女は何も答えず、家の中に戻ってしまいました。
彼らは更に村を探索し、廃れた神社を見つけました。
その神社は古く、何か儀式の跡が残されているようでした。
夕暮れ時、彼らは神社で休憩していると、突然、奇妙な歌声が聞こえてきました。
歌声は、村の奥から聞こえているようでした。彼らは好奇心に駆られ、声のする方向へと進みました。
村の奥には、大きな岩があり、その周りで踊る村人たちの姿が見えました。
村人たちは、異様な仮面をかぶり、奇怪な踊りを踊っていました。彼らはその様子に呆然としました。
突然、踊りが止まり、村人たちはヒロシたちを取り囲みました。
村の長老のような男が現れ、
「お前たちはこの村の秘密を知った。今夜、お前たちもこの村の一員となる」
と言いました。
彼らは恐怖に震えながらも抵抗し、村から逃げ出しました。
しかし、森の中で道に迷い、夜が更けていきました。
途中で、アヤカが
「誰かに追われている気がする」
と言い、彼らは更に急いで進みました。
深夜、ようやく彼らは山を下り、安全な場所に到着しました。
ヒロシたちは警察にこのことを報告しましたが、警察は幽谷村の存在を信じず、彼らの話を無視しました。
その後、ヒロシたちは何度か山に戻り、幽谷村を再び探しましたが、二度とその村を見つけることはできませんでした。
幽谷村は、まるで霧の中に消えたように、彼らの前から姿を消しました。
この出来事から数年後、ヒロシたちは再び、地図に載っていない村の噂を耳にしました。
それは、幽谷村と酷似していました。
彼らは、幽谷村が時空を超えて現れ、消えているのではないかと考えるようになりました。
最後までお読みいただきありがとうございました。
このお話はフィクションです。