霧の中の少女 - 湖畔の伝説(短編)

山深い地方にある小さな村の近くに、静かで美しい湖がありました。

この湖は、特に早朝には濃い霧に包まれることが多く、神秘的な雰囲気を醸し出していました。

しかし、この湖には古くから伝わる恐ろしい伝説がありました。

それは

   「霧の中から現れる少女」

の話です。

 

大学生のケンタは、夏休みを利用して、この村にキャンプに来ていました。

彼は写真を撮るのが趣味で、特に湖の美しい風景に魅了されていました。

ある朝、ケンタは湖で日の出を撮影するために、夜明け前に湖畔へと向かいました。

 

霧が立ち込める中、ケンタはカメラのシャッターを切っていました。

すると突然、彼の目の前に白いドレスを着た少女が現れました。

少女は湖の方を見つめており、ケンタにはその顔がはっきりと見えませんでした。

 

ケンタは少女に声をかけようとしましたが、彼女は静かに霧の中に消えていきました。

その後、ケンタは村の人々にこのことを話しましたが、村人たちは色を失い、恐怖に震えるような様子でした。

 

村の長老によると、この少女は何十年も前に湖で溺れ死んだと言われており、彼女の霊が霧の中から現れるという伝説があったのです。

しかし、実際に少女を見た者はほとんどおらず、ケンタはその珍しい一人となりました。

 

興味を持ったケンタは、この少女についてもっと調べることにしました。

彼は村の図書館で新聞の古い記事を調べ、少女についての情報を集めました。

 

記事によると、その少女は村の漁師の娘で、ある日、不慮の事故で湖に落ち、そのまま行方不明になったとありました。

しかし、その後、彼女の遺体は一度も発見されず、謎が多いままでした。

 

ケンタは、少女が何かメッセージを残そうとしているのではないかと考え、再び霧の立ち込める湖畔を訪れました。

彼は少女が現れるのを待ち、霧の中をじっと見つめていました。

 

やがて、少女の姿が再び現れました。

今度はケンタは少女に近づき、話しかけました。

少女は悲しそうな表情を浮かべながら、ケンタに彼女の死の真相を伝えました。

 

彼女は、実は湖で溺れたのではなく、何者かによって湖に突き落とされたのです。

彼女の死は事故ではなく、殺人事件だったのでした。

ケンタはこの衝撃的な事実を受け止め、警察に通報しました。

 

警察の調査の結果、真犯人が村の中から見つかりました。

真犯人は長年、罪の意識に苛まれて生きており、ついに罪を認めました。

少女の霊は、この真実が明らかになると、静かに消え去りました。

 

この事件が解決した後、村の人々は少女の無念を晴らすために、湖畔に慰霊碑を建てました。

ケンタは、この出来事を通じて、過去の秘密が時には霧のように深く隠されていることを知りました。

 

最後までお読みいただきありがとうございます。

このお話しはフィクションです。