廃ホテルの幽霊客 - 閉ざされた部屋の秘密(短編)

かつて海辺の町に栄えた古いホテルは、今では人々の記憶から忘れ去られた廃墟となっていました。

このホテルには、一つの部屋だけがいつも施錠されており、その部屋にまつわる不気味な噂がありました。

大学の心霊研究サークルのメンバーであるカナは、この廃ホテルの噂に興味を持ち、仲間たちと探索に出かけることにしました。

彼らはカメラと録音機器を持って、夜のホテルに潜入しました。

 

ホテル内は埃っぽく、長い間人の手が入っていないことがわかりました。

彼らは廊下を進みながら、部屋ごとに探索を行いました。そして、ついに施錠された部屋の前に到着しました。

 

部屋のドアは厚い鉄の扉で、鍵がかけられていました。

カナはドアに耳を澄ませると、部屋の中から微かな声が聞こえるような気がしました。

声は

「助けて」

と繰り返しているようでした。

彼らはドアを開けるために工具を使い、何とか部屋に入ることに成功しました。

部屋の中は驚くほどきれいに保たれており、壁には古い絵画が掛けられていました。

部屋の中央には、一組のカップルの写真が置かれていました。

カナは写真を手に取ると、突然、部屋の中で怪現象が起こり始めました。

家具が勝手に動き出し、壁の絵画が落ち始めました。そして、彼らは部屋の隅に透明な女性の霊を見つけました。

女性の霊は、かつてこのホテルに宿泊していたが、恋人との悲しい出来事によって命を落としたと語りました。

女性は恋人との思い出が詰まったこの部屋に、自分の霊が閉じ込められてしまったと言いました。

 

彼らはこの話を地元の新聞の古い記事で確認し、数十年前にホテルで発生した悲劇的な事件を知りました。

記事によると、そのカップルはホテルで争い、その末に女性が不慮の死を遂げたとされていました。

 

カナたちは、女性の霊が安らかに眠れるように、部屋で追悼の儀式を行いました。

儀式が終わると、女性の霊は感謝の言葉を残し、穏やかに消え去りました。

 

この出来事を通じて、カナたちは過去の悲劇が現在にどのような影響を与えるかを学びました。

そして、廃ホテルはその後、悲しい過去を抱えた場所として、地元の人々に語り継がれるようになりました。

このお話しはフィクションです。

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