忘れられた地下室 - ささやく壁の声(短編)

都市の郊外に位置する古い屋敷には、長い間人の足が踏み入れていない地下室がありました。

この地下室には、壁が囁くという奇妙な噂がありました。

地元の人々は、この地下室には不吉な過去が隠されていると囁いていました。

 

民俗学に興味を持つ大学生のアサミは、この地下室の謎に興味を持ち、調査を行うことにしました。

彼女は友人のタクヤと共に、古い屋敷を訪れることにしました。

屋敷に到着した彼らは、荒廃した家屋とその陰鬱な雰囲気に圧倒されました。

彼らは勇気を出して地下室に降りていきました。地下室は薄暗く、湿気とカビの匂いが立ち込めていました。

 

地下室でしばらく時間を過ごすと、アサミとタクヤは壁から微かな囁き声を聞き始めました。

声は、

   「逃げて」

と繰り返し囁いていました。

彼らはこの声の正体を突き止めるため、地下室の調査を進めました。

 

地下室には古い文書や写真が残されており、その中には屋敷の歴史とそこに住んでいた人々の情報が記されていました。

文書によると、屋敷はかつてある医師が所有しており、彼は禁断の実験を行っていたことが示唆されていました。

 

さらに調査を進めると、アサミとタクヤは地下室がかつて実験室として使用されていたことを発見しました。

壁の中からは、実験の犠牲になった人々の声が聞こえてきていたのです。

 

彼らは、犠牲者たちの霊を安らかにするために、地下室で追悼の儀式を行いました。

儀式中、地下室は一時的に霊たちの声で満たされ、彼らの過去の物語が明らかになりました。

これらの霊たちは、医師による非人道的な実験の犠牲者であり、彼らの魂は長年地下室に縛り付けられていたのです。

 

儀式が終わると、地下室の空気は一変し、静寂が戻りました。

壁からの囁き声も消え去り、地下室は再び平和を取り戻しました。

アサミとタクヤは、この経験を通じて、忘れ去られた歴史の影響と、過去の出来事が現在に与える影響を深く理解しました。

 

この事件の後、古い屋敷は地元の歴史的な遺産として保存され、地下室で起きた出来事は地元の人々に語り継がれるようになりました。

アサミとタクヤの調査は、忘れ去られた魂たちの声を世に知らしめ、彼らの物語を後世に語り継ぐきっかけとなりました。

このお話しはフィクションです。

最後までお読みいただきありがとうございます。

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